Audiolab Used Restore

 
2007年9月中旬。翌月に控えた『ハイエンドオーディオショウ東京2007』出展予定の【JBL L75 MINUET】のレストア作業を開始しました。このスピーカーはユニット構成がユニークで、【LE8T+PR8】のフルレンジ+パッシブラジエターがとても小さなエンクロージャーに収まっているなんともかわいらしいものです。構成パーツも少ないので一つ一つ細かくレポートしていきたいと思います。 なお、今回は東京で皆様に見ていただく大切なものですので、ユニット、パッシブラジエターともJBL純正パーツにて新品交換します。見違えるようになるに違いありません。。。
 
 

 

作業前のエンクロージャー外観


1.ユニットをはずした状態です。左右で色の違いがあります。並べるとかなりはっきりわかります。


2.格子ネットも汚れとくすみで真っ黒です。格子自体はどうやら塗装で仕上げられているようです。

3.突板(つきいた)がはがれています。段差になっていますしなにより色がまったく違うため目立ちます。何とかしなければなりません。

4.天板(底板?)です。このシステムはどこが天板なのかいまひとつ釈然としません。プレートは横についているので、ひょっとすると横置きとも思えますし・・・。いずれにしてもこの部分は前オーナーが底板と認識していた場所と思われ、かなりの擦り傷、打痕があります。できるかぎり目立たないようにしたいものです。 

5.背面バッフルです。いまいちわかりにくいですが、塗装などかなりムラがあり汚れも目立ちます。


6.スピーカーターミナルの接点ビスです。どちらも相当の酸化です。音質に影響しますので交換します。


7.背面バッフル側の木材の接合部です。経年のゆがみでしょうか?隙間ができています。今のうちに補修、補強が必要です。

8.前面も同様に隙間がありました。

9.これはペア側です。この隙間が一番溝が広いです。なかに何か詰め物をしているようです。おそらく以前もパテか何かで補修をしていると考えられます。

10.正面から見た画像です。完全に断裂していますが、隙間に詰め物が見て取れます。補修したと思われますが、まさか工場出荷時点ですでにこの補修がされていた可能性もすてきれませんし、、、いずれにしても補修が必要です。

全体的に年相応の劣化が見て取れます。エンクロージャーはかなり苦労しそうな予感がします。ですが、まずはユニットから作業に取り掛かりたいと思います。
 

 

フルレンジユニット【LE8T】 レストア作業

1.こちらははずしたコーン紙です。しみがあったりであまりきれいではありません。

2.注目するとセンターキャップがへこんでいますし、このままはやはり使用できないようです。

3.こちらがユニットの内部です。酸化もほとんどなく、かなりきれいです。ユニットに異常なかったのですが、それもうなずけます。 フレームもやや酸化が見られます。

4.側面から見ると金属の帯の部分がかなりレモン色っぽく変色していることがわかります。通常は金属の色(シルバー)ですのでかなり酸化しています。内部に比べるとここだけ酸化が進んだようです。

5.酸化の進行度合いはどちらも同程度のようです。

6.ターミナルのビスは酸化しています。交換します。

7.磁気回路だけです。かなり状態は良いようです。

8.別角度です。


9.酸化をきれいに落としました。もちろんギャップ内部も丁寧に研磨しています。防錆処理を行えばひと段落です。


10.とてもきれいになりました。


11.ターミナルビスです。内部もかなり酸化しています。

12.新品に交換しました。ラグも接点復活剤で丁寧にクリーニングしています。

13.作業前の画像と比べていただくとわかりやすいのですが、フレームも磨き上げました。この部分も酸化しますし、外から見える部分ですので仕上がりに直結します。ここまでの作業で準備は完了です。

14.新品のコーン紙をはりました。白が鮮やかです。

15.センターキャップも新品は輝きが違います。

16.左右とも見違えるようになりました。組み込みが待ち遠しいです。

 

パッシブラジエター【PR8】 レストア作業

1.ユニットを取り外さないとなかなか見れませんが、パッシブラジエターの背面はこのようになっています。

2.これは作業前です。コーン紙はかなりきれいですが、エッジは経年劣化によりぼろぼろです。通常であればエッジ交換のみで問題ないですが、今回は妥協をせずに完璧にしたいとの思いから新品のパーツを使って貼り替えることとしました。

3.横からみるとエッジが完全にコーン紙から脱落していることがわかります。

4.フレームは表面の削りだし部分がやや酸化している以外、とくに問題は見当たりません。程度はなかなかのものです。

5.組立て前です。これを元どおりに組み立てて、作業は完了です。ちなみに、これはユニットも同様ですが新品のパーツはセンターキャップがばらばらで着ます。コーン紙を貼り、最後の仕上げでセンターキャップを貼ります。この工程が一番の腕の見せ所です。
 

 

エンクロージャー レストア



1.接合部分の隙間を補修します。接着剤を流し込み、巨大な万力のようなもので圧着します。これでたいていは隙間を補修することができます。どうしても埋まらない場合はパテなどを用いることもあります。
下の写真は突板がはがれた部分を補修したものです。まだまだ完全ではありませんが、どうにか目立たなくできました。


2.前面バッフルは再塗装を行いました。もともとのチップ材の密度が荒いため、塗装も均一にのってくれないですが、作業前に比べるといくぶん締まって見えます。

3.背面バッフルも再塗装しました。こちらも前面バッフル同様もとの材がいまひとつではありますが



4.天板部分です。傷はできる限り目立たなくなるよう素地調整を念入りに行い、オイルで仕上げました。かなり深い傷もあり完全に元どおりとはいきませんでしたが、比較していただくと段違いにきれいになっています。


5.これはスピーカーターミナルです。酸化、汚れが見られます。ビスは新品に交換、ターミナルもクリーニングを行います。

6.交換部品ともともとのビスです。

7.クリーニングを行ったターミナルです。内部も接点復活材で丁寧にクリーニングしています。

8.内部配線です。もともと使用されていた赤黒のケーブルは端末の処理、半田の付け方などから、どうやら前オーナー様がご自分で替えたもののようです。酸化もかなり進んでいるようですので、今回はJBLといえばの、ベルデンのケーブルに変更します。ラグも丁寧にクリーニングしました。

9.取り付け後です。これでエンクロージャーは準備完了です。あとは組み込むだけです。
 
格子ネット 補修



1.作業前です。全体的にくすんでいます。塗膜が劣化した影響のようです。


2.大きな傷もあります。かなりえぐれています。

3.塗装がはがれた部分です。



4.エンクロージャー同様素地調整を丁寧に行い、最後にオイルで仕上げました。一皮向くと真っ白になり、すじも目立つようなので、エンクロージャーで使ったものより色の濃いオイルを使用しました。傷跡もほとんどわからなくなったようです。


5.塗装はがれは判別できないくらいになりました。

6.同じ作業を2枚分行って完成です。

 

完成 【L75 MINUET】


1.本当にユニークなスピーカです。

2.オイルもようやくなじんできて落ち着きのある色合いになってきました。

3.左右の色の違いも作業前にくらべると改善したようです。

4.背面バッフルです。

5.底板部分です。右はまだ若干の傷がありますが、かなりきれいになりました。左は木目の影響もあるでしょうが、ほとんど傷は見えません。

6.ネットをつけると、また一味違った趣です。

7.音だしチェックも終わり、ようやく完成です。コーン紙が新品のため音はまだまだですが、少しずつ良くなってきています。エージングが楽しみな毎日です。
 


お付き合い誠にありがとうございます。なかなかお目にかかれない珍しいスピーカーでしたが、小さくてとてもいい子でした。作業を行っている間中どんな仕上がりになるか、とても楽しくすごしました。きっと新しいオーナー様にかわいがってもらえると思います。

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